2016.5.11
突然ですが、「施設に入居する」と聞いたとき、どんなイメージが浮かぶでしょうか。安心と引き換えに、自由や自分らしさを手放す場所――どこかで、そんな前提を持ってはいないでしょうか。しかし、QOLサービスの入居系サービスを見ていくと、そのイメージは少しずつ揺らいでいきます。
サービス付き高齢者住宅、共生ホーム、シェアハウス、グループホーム。4つの「暮らしの場」に共通していたのは、介護が必要になったとしても、「自分の人生を続けていく」ための環境でした。
ここに1記事目のリンクつけます(オヤトリドリさんの作業)
目次

最初は、最も日常の暮らしに近い選択肢ともいえる、サ高住(サービス付き高齢者向け住宅)をご紹介しましょう。「サ高住」は、文字通り「サービスがついている住宅」です。高齢の住居者にとって必須ニーズである「いつも安心して誰かに頼める」というサービスが徹底されていないこともあります。
たとえば、夜間や休日にスタッフが不在だったり、専門資格を持たない職員が対応しているケースもあります。国土交通省が管轄省庁なので、「ケアをする」ということよりも、「住宅として適正であるか」に主軸がある法整備状況だからという背景があると筆者は感じています。
そんな現状の中で、グラシアス・アネックスは、24時間365日、職員が常駐し、すべてのスタッフが有資格者という体制が整えられていました。館内には、家族や友人と自由に過ごせる共有スペースがあり、面会や外出も原則自由です。入居者の方は、実際に家族と食事に出かけたり、自宅に戻ったりする方もいるといいます。また、施設の目の前では地域の人が集まるマルシェが開かれるなど、外部とのつながりも自然に生まれています。施設の中に閉じるのではなく、社会との接点を持ちながら暮らせる設計です。
費用面は、入居一時金は不要で、月額利用料はおよそ15万円前後です。これに介護保険サービスの自己負担分が加わります。入居条件は、「要介護であること」です。介護が必要になる、もといサポートが必要になったとしても、自分らしく過ごす時間が守られている場所だと感じました。
「共生ホーム」は、QOLサービスの造語で、高齢者や障害のある方など、さまざまな背景を持つ人たちが、同じ場所で暮らす住まいを指します。
入居条件は、「要介護認定を受けていること」。つまり、介護が必要な方が暮らす場です。介護施設というと、「安全管理」を理由に、外出や外泊、面会などに制限が多いイメージを持つ人も少なくありません。けれども、「ありがとう共生ホーム」には、そうした“管理される暮らし”の空気感があまりありません。
面会や外出の自由度は比較的高く、「施設に入る=自由がなくなる」というよりも、「必要な支援を受けながら、その人らしい暮らしを続ける」という考え方がベースにあるように感じました。
その背景にあるのが、同じ建物内に併設された看護小規模多機能型居宅介護の存在です。訪問介護や看護を組み合わせた24時間365日の体制により、介護度や障害が中重度の方であっても、切れ目なく支えられる仕組みが整っています。ナースコールや見守り機器によるサポートもあり、「自由」と「安心」が両立されています。
敷地内の果樹園では、利用者同士が園芸を楽しむ姿も見られます。元気な方から介護が必要な方までが同じ場所で過ごし、散歩や日常の会話が自然に生まれている様子は、「施設」というよりもひとつのコミュニティのようでした。
居住空間は、バリアフリー設計の完全個室で、すべての居室にバイタルモニターを設置。プライバシーを保ちながらも、安心して暮らせる環境が整えられています。
費用面は基本の月額利用料が約13万円です。これに介護保険サービスの自己負担分が加わります。「医療的なケア体制が整っている介護施設は費用が高くなりがち」という先入観を筆者は持っていましたが、ここでは経済的な意味でも安心が過度な負担につながらないよう設計されていました。
では、もう少し暮らしの距離感が近づいた場所では、どうなるのでしょうか。その一つが、「ありがとうシェアハウス」です。

食事は、1日3食付きで日々の生活に必要なものが一通り揃った環境で入居者は女性です。月額利用料は98,000円、入居時の費用も68,000円と大きな初期負担がかからない設計です。
また、隣接する看護小規模多機能型居宅介護を併用することで、医療的ケアが必要になった場合でも、最期までその人らしい暮らしを続けることが可能です。つまり「シェアハウス」という名称ですが、「看取り」までを見据えた体制が、あらかじめ組み込まれています。
一見すると「安さ」が目を引きますが、その内側にあるのは、「単身の女性が、最期まで安心して暮らすにはどうすればいいのか」という問いへの、ひとつの答えだと思いました。費用的には生活保護の範囲内でも入居が可能であることを踏まえると、社会の側の受け皿としての意味も持っているように感じます。

つい最近まで、日本では女性が外に出て働くこと、つまり「稼ぐ」ことが当たり前ではありませんでした。仮に老年期に十分な老後資金を準備できなかったとしても、その背景には個人の問題だけではなく、社会構造の影響もあったと思います。そうした現実を思うとき、この場所が果たしている役割は決して小さくありません。

見学をさせて頂いたのは、ケアハウス内で夕飯の準備をされている時でした。館内に漂う家庭的な雰囲気は、ここが単なる施設ではなく、ひとつの「共に暮らす場」であることを感じました。介護度の高い方を、周囲の入居者やスタッフが自然に気にかけ、支え合う――そんな空気が、特別なものではなく、日常として根づいていました。「安いから選ばれる場所」ではなく、「ここで暮らしたい」と思える理由がある。そんな場所でした。

入居系サービスの最後は、ありがとうグループホームです。

まずは、上記の賞状を見て下さい。「リビング・オブ・ザ・イヤー」。2017年の審査員は100名、それぞれが1票を持つ形式でした。評価が分かれるのが当たり前の中で、結果は100票すべてが、この施設に集まったのです。
1記事目で、「ファイナンシャルプランナーの畠中雅子さんが『自分が認知症になったら入居したい』と語っていた」とご紹介しましたが、それは、畠中さんが審査員の一人だったからだそうです。
実際にこの場所に身を置くと、その理由が少しずつ見えてきます。
「本当はご家庭で過ごされるのが一番ですよね」と施設長は言います。けれども、ここでは、朝起きる時間も、朝食がパンかご飯かも、一人ひとりに委ねられているそうです。一事が万事、その人らしさが尊重され、家庭で過ごす延長のような時間が、ここには流れています。
家族も施設の行事に一緒に加わり、庭には四季の草花が植えられています。私の印象に残ったのは、「大切な人をここで見送った後も、家族がボランティアとして関わり続けることがある」というエピソードです。この場所が、家族にとってどれほど感謝の気持ちが残る、大切な場所であるかを物語っているように感じました。
QOLサービスの社長、妹尾弘幸氏は、こう語ります。
たとえ(介護度が)重度になっても、残された能力を活かし、少しでも心地よく、楽しく、輝いて暮らしていきたいのではないでしょうか。そんな暮らしを、少しでもお手伝いしたいと考えています。
「施設に入居する」という言葉に、私はどこかネガティブな響きを感じていました。けれど、「ありがとう」の入居系サービスを見学して、そのイメージは大きく変わりました。
ここで暮らす時間は、単に“介護される生活”ではなく、その人らしく生き続けるための暮らしとして設計されていたからです。もし将来、介護が必要になったとしても、働き盛りの子どもたちに無理を背負わせるのではなく、信頼できるプロに託しながら、自分らしく暮らしていく——。そんな人生後半の選択肢があることに、私は大きな安堵を覚えました。「介護移住」という言葉が頭をよぎるほど、心に残る見学でした。
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