2016.8.18
【ガッツリ、読書】
鴨川で、私は、おおむね読書をしていた。
付箋を貼ってまで読みこんだのは、
2007年の夏(今から9年前だ!)
当時住んでいた札幌で、井上ひさしさんの講義を受けた。
おそらく、のべ日数で1週間くらいだっただろうか?
生まれて初めて見る、「作家」という人種が持つ
その言葉の「過不足のなさ」に強い衝撃を受けた。
その時に井上ひさしさんが
「文章を書いていきたいのならば、近代文学全集には目を通しなさい」
とおっしゃっていたので、挑戦したことがある。
坪内逍遥の「小説真髄」、二葉亭四迷の「浮雲」までは何とか読めた。
(古典の文章を読むのは、普通の読書とは全く違うが)
けれども、その後の北村透谷。ここで挫折した。
例えがちょっとアレだが。
明治神宮の参道を歩いていると肌で感じる
天から地面に向かって刺さっているような「気」、
北村透谷の文章には、そんな感じの強い「気」を感じ、
読めなくなってしまった。
つまりは、彼の文章に漂う気迫に負けたのだと思う。
ちなみに、北村透谷は25歳5ヶ月で自死している。
「近代の文学と文学者(中村光夫/朝日選書)『上』」では、
1)文学とは何か
2)明治をかえりみて
3)北村透谷
4)開拓者の時代
という4章だてになっており、
「北村透谷は、やっぱり乗り越えられない『海峡』だったんだ」と、何だか安心した。
日本の近代文学の海はあまりにも広く、深く、
私はアッという間に溺れてしまった。
けれども、中村光夫という「ボート」を得て、一息ついた気分。
この「ボート」を拠点に、もう一度、日本の近代文学に触れてみようかな、
と思えたのが今回の収穫。
★中村光夫:文芸評論家。芥川賞選考委員を30年を務めた。
村上春樹の「1973年のピンボール」が芥川賞候補になった時に
大江健三郎と吉行淳之介が支持、井上靖と中村光夫は拒否したことは有名。
その後の村上春樹の活躍を見ると「見る目がない‼?」と思われそうだが
私は中村光夫の感性と感覚が、自分に合っていると感じている。
ちなみに。
1973年のピンボールの芥川賞の選評も的を得ているという意見を
ネットで発見したのでリンクしておく。
●
【久しぶりに買ったよ】
「コンビニ人間(村田沙耶香)」が全文記載されてるので、
鴨川に行く電車の中で読もうと、キオスクで文藝春秋を買った。
久しぶりにパラパラめくって思ったこと。
「私は雑誌を買わないが、
息子たちのために、家の中に転がしておいてもよいかな?」。
今さらだけど、品格のある雑誌だよ、文藝春秋。
姉妹誌‼?のスプリングセンテンスとは大違い。
で。
「コンビニ人間」
未来の手触り。
「キュッ、キュッ」と音がするような、そんな手触りで
読後感は、スコーン!と、爽快だった。
芥川賞をとった作品というのは、
多くが、「これが『お芸術』で、ございますのね・・」と、いう感じで
読むのに困難を極める(私の場合)。
その困難さは大別すると
1)マジで!! 何を言いたいのか(伝えたいのか)理解できません!
2)文章や世界観が、生理的に受け付けない
の2タイプに分かれる。
ちなみに、かの有名な「火花」は後者。
数行読んで、「無理だから!」と本棚に置きっぱなし。
その点、今回の「コンビニ人間」は、
ものすっごくフレンドリーに読めたし、生理的にも好きなタイプの作品。
ここまで夢中になって読んだのは、
多和田葉子さんの「犬婿入り」(1992年・第108回)ぶり。
ちょっと(かなり)興奮した。
★多和田洋子:作家。ドイツ在住で、ドイツ語での著作も多数。
拾ったのでリンクしておく。
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