海外起業で勝つためのリアルQ&A──日本人がつまずくポイントと、その乗り越え方

2026.4.21

30年にわたりドイツとフランスで飲食業を展開してきた飯守篤子さんと、パリで飲食事業を手がける佐藤大輔さんの対談【前編 日本人がヨーロッパで飲食業を営むとき、何が武器になるのか──フランスとドイツの勝ち筋から読み解く」】の続きです。

息が合った「掛け合い漫才」のようなトークのお二人

後半では、会場から寄せられたリアルな質問に対して、飯守篤子さんと佐藤大輔さんが率直に答えていきます。海外で生きていくうえで避けて通れない問いに、現場で積み重ねてきた経験から向き合います。

Q1 海外から見た日本人の強みと弱みは?

海外に挑戦しようと考えています。ヨーロッパの人たちから見たとき、日本人の良さや弱さはどのように映っているのでしょうか。現地で長く暮らしているお二人の視点で教えてください。

佐藤さん 日本人の良さとしてよく感じるのは、「人の話をきちんと聞く姿勢」です。フランスでは、相手が話している途中でもどんどん話す人が多いので、ちゃんと聞いているだけで「理解してくれている」と受け取られることもあります。一方で、交渉の場面では、日本人はどうしても“落としどころ”を探してしまう傾向があります。海外では「ここまではOK、ここからはNG」と線を引く方がうまくいくことも多く、その違いは感じます。

篤子さん 日本人の強味でもあり、ある意味弱みという点に繋がるのかもしれませんが、責任感のあり方が違うと感じることがあります。ドイツでは、担当者がすぐ変わったり、「それは自分の仕事ではない」と他の人に回されることが多いんですね。一見すると責任感がありそうに見えても、実際には個人として最後まで責任を持つという感覚は、日本人の方が強いと思います。実際、コールセンターに電話しても、たらい回しにされて終わることも珍しくありません。最終的に「誰もわからない」で終わることもあります。

そういう意味では、日本人のように一つのことを最後まで引き受ける姿勢は、海外では必ずしも当たり前ではないと感じます。

Q2 海外で日本人コミュニティは頼るべき?

ヨーロッパで長く暮らされているお二人にお聞きします。最初の段階で、日本人コミュニティに頼るべきなのでしょうか。それとも、現地の人たちの中に入っていく方がよいのでしょうか。

佐藤さん 私は最初の15年くらい、日本人コミュニティにはほとんど関わりませんでした。現地でやっていく以上、まずはその社会に溶け込むことを優先したかったからです。また、日本語でのやり取りに戻ると、せっかく身につけた現地の感覚が崩れることもあるため、意識的に距離を取っていました。

今は、必要に応じて日本人コミュニティとも関わるようにしています。自分の軸ができたからこそ、行き来できるようになったという感覚ですね。仕事上のネットワークとしても、日本人同士で助け合える場面はありますし、情報交換の価値も感じています。ただ、あくまでベースは現地に置いています。どちらかに寄りすぎるのではなく、両方を使い分けるようになった、というのが今のスタンスです。

篤子さん 日本人コミュニティという意味でいうと、ドイツではデュッセルドルフが一番大きいですね。日本語が通じる弁護士さんもいますし、日本人学校も大きい。日本語が通じるお店も多くて、極端に言えば、日本語だけで生活できるとも言われています。

ただ、私自身は最初の頃、日本人との付き合いはほとんどありませんでした。今も多くはないですが、基本的には現地の人たちとの関係の中で生活しています。ご近所のおじいさんと猫の話で盛り上がったり、同業者と自然に仲良くなったり、そういう関係はありますが、日本人同士で集まることはあまりないですね。

私も最初の2〜3年は日本にも帰らず、とにかくドイツ語で考えて、ドイツ語で生活することに集中していました。日本語に戻ってしまうと、また切り替えるのが大変なんです。道場に入ったような感覚で、環境にどっぷり入ることを大事にしていました。

Q3 イタリアに移住予定。現地での仕事は、何がいい?

イタリア人のパートナーがおり、将来的にフィレンツェに移住する予定です。現地で仕事をすることを考えたとき、どのような仕事に需要があるとお考えですか?

佐藤さん 大きく分けると、「需要ベース」と「好きベース」の2つがあります。需要で考えると、仕事がある場所に自分が合わせることになるため、必ずしも自分が行きたい場所にいられるとは限りません。一方で、好きベースで選ぶと、その場所に根を張るような働き方ができると思います。また、ヨーロッパは想像以上にコネ社会で、人との関係性の中で仕事が回る面も大きいです。

篤子さん イタリアなどは特にそうですが、「人」と「場」の影響がとても大きいと感じます。実際に商売をしてみると、「どんな仕事をするか」だけでなく、「どこで」「誰と」やるかによって、結果が大きく変わることも多いですね。

Q4 海外で起業するなら、資金はいくら必要?

将来的に、バルセロナで小さな日本食のバーを開くことを夢見ています。現地で起業する場合、どれくらいの資金が必要になるのでしょうか。また、資金は日本で準備しておくべきなのか、現地で調達できるのかも気になります。

篤子さん 素敵だと思います。あなた、すごく雰囲気がいいから。バルセロナっていう街にも合っていると思うし、その前髪の感じもいいですよね。そこで、小さなバーがあって、立って「いらっしゃい」って迎えて、日本食をタパス風に出して、美味しいお酒も楽しめる。そういうお店だったら、すごく流行ると思います。なんかもう、私には見えますね。いい感じにやっている姿が。だから、いけると思います。小さくスタートすれば、しっかり利益も出ると思いますよ。

ただ、現地でお金を借りるのは本当に難しく、実績があっても貸してもらえないことがあります。そのため、基本的には日本で資金を準備して持っていく方が現実的です。家族の協力も含めて、どう資金を作るかはとても重要です。

佐藤さん バルセロナは何度か行っていますが、正直なところ、日本食はまだそこまで浸透しているとは言えない印象です。スペイン全体に言えることですが、料理の文化がとても強くて、伝統も厚い。その分、日本食が入り込む余地は、現状ではそれほど大きくないように感じます。ただ一方で、某日本のソースがヨーロッパの中で最も売れているのがスペインだという話はあります。現時点では簡単な市場ではないものの、今後の広がりという意味では、可能性がある地域でもあると思います。また、バルセロナは大都市なので、その分コストも高くなります。お客さんは多いですが、その分リスクも大きい。そうした点を踏まえて、収益とリスクのバランスを見ながら判断する必要があると思います。

Q5 ヨーロッパの経営者は、どんな働き方をしている?

ヨーロッパで働く人は、ワークライフバランスを大切にしているイメージがあります。その中で、経営者や上の立場の人たちは、どのような働き方をしているのでしょうか。実際の現場感を教えてください。

佐藤さん フランスでは、一般の労働者は労働時間が法律で厳しく管理されています。週35時間が基本で、仮に残業をした場合も割増賃金を支払う必要があります。そのため、企業側としてもできるだけ残業をさせない前提で人員配置や業務設計を行っています。一方で、幹部社員以上になると扱いが変わってきます。管理職層や経営層になると、時間の制約自体がほとんどなくなります。そのため、一般の労働者は長期休暇をしっかり取り、バカンスを楽しむ文化が根付いている一方で、経営者や幹部層は時間に縛られず、実際にはかなり長時間働いているケースも多いです。フランスは一見「ワークライフバランスの国」に見えますが、立場によって働き方が大きく分かれる社会とも言えると思います。

篤子さん ドイツでも似ていますが、上に行くほどよく働く印象があります。結果として、「お金はあるけれど時間がない人」と「時間はあるけれどお金がない人」に分かれるような構造があると感じます。

Q6 海外で迷ったとき、どう立て直す?

海外で、「いきなり評価をされる」ということは少なく、自分の強みや価値に迷うこともあると思います。長く海外で活動されてきた中で、落ち込んだときや迷ったとき、どのように立て直してきたのか、考え方や行動を教えてください。

篤子さん 落ち込んだときは、あまり考え込まずに、とにかく体を動かして働きます。飲食業は肉体労働なので、仕入れに出たり、渋滞の中で運転したり、目の前の仕事に集中しているうちに、時間がどんどん過ぎていきます。そうやって無心で動いていると、気持ちが少しずつ上向いていきます。

笑顔で接客をしていると、お客さんや周りの人たちからエネルギーをもらえることも多いです。一人でやっているつもりでも、実際にはスタッフやお客様、家族や仲間が支えてくれていると実感する瞬間があります。そういうつながりを感じることで、「一人じゃない」と思える。それが、次に進む力になっています。振り返ってみると、落ち込んでいる時期も決して無駄ではなくて、自分を見直す大事な時間だったと感じています。。

佐藤さん 私自身、40代の頃に、自分の価値がわからなくなった時期がありました。何が強みなのか、自分は何を提供できるのか?が見えなくなってしまったんですね。当時はリヨンにいて、とにかくいろいろな仕事を引き受けていました。あれもこれもと手を広げる中で、「やりすぎている」「敵を作りすぎている」と周囲から指摘されることもありました。

そのときに気づいたのが、自分のプライドの高さでした。フランスでは自己主張が強い人が多いので、自分もそうでなければいけないと思い込んでいたのですが、実はそれが自分を苦しめていた面もあったんです。そこから一度立ち止まり、自分の動きやスキルを整理しました。たとえば、シェフは現場から離れにくい一方で、自分は外に出て人とつながることができる。その違いが、自分の役割になっているのではないかと気づいたんです。

つまり、自分の強みは「何ができるか」だけでなく、「どの立場で、どう動けるか」にあると理解しました。また、自分一人で考えるのではなく、周囲との関係の中で見えてくるものも大きかったです。シェフや仲間とのやり取りの中で、「自分はこういう価値を求められているのか」と気づくことができました。その後はトップダウンのやり方ではなく、あえてスタッフと近い距離で関係を築くなど、自分なりのやり方を選ぶようにしています。

迷ったときは、自分の内側だけで答えを探すのではなく、環境や人との関係の中で、自分の役割を見つけていく。そういうプロセスが大切だと感じています。トラブルが多い環境なので、そもそも立ち止まっている余裕がない、というのもあります。常に何かが起きる中で、その都度判断して動いていく。その積み重ねで前に進んでいく感覚です。

前半の講演会1時間、休憩をはさんで、後半のQ&Aコーナー1時間、その後、篤子さんからのお土産を手にお客様は満足そうに帰っていかれました。

チョコレートを小分けにして各人に一つずつお土産に

満席の懇親会。篤子ファンが集まる理由

その後、場所を移動して懇親会へと進みます。

講演会の余韻が残るなかで開かれた懇親会は、講演会のチケット発売直後に満席となってしまいました。参加をご希望くださったにもかかわらず、ごく一部の方にしかお席をご案内できなかったこと、心苦しく思ってます。この場を借りて、お詫びします。

年齢も背景も異なる参加者の方々が、それぞれの理由でこの場に集まっていました。その声を、そのままご紹介します。(敬称略でお名前はカタカナとさせて頂きました)

テーブル1

大盛り上がりの中、カメラに向かってチーズ!

リコ 海外に長い間住まれて、ご活躍されて、会社も経営していらっしゃる、そのマインドや生き方を知りたくて今日は来ました。とても勉強になるいい時間でした。ありがとうございました。

ヒロミ シュトゥットガルト在住のひろみです。やっとお会いできて本当に嬉しいです。またドイツに帰ったら伺わせていただきたいと思います。よろしくお願いします。

ジュンコ また登場しちゃいました。パリコレデビューを目指して頑張ります。篤子さんLOVEです。

ナリオ 今回初めて講演会に参加させていただきました。篤子さんのポジティブシンキングに元気をもらい、自分の道を歩んでいきたいと思いました。ありがとうございました。

シライシ 以前、佐藤さんのお店でスタッフとして関わっていました。社長とは思えないほどスタッフ一人ひとりの健康管理まで気にかけ、自ら動かれている姿を見てきました。その経験から、今もファンとして参加しています。

ミチヨ フランクフルトに住んでいた頃、飯守さんのカフェの前をよく通って、ずっと憧れていました。インスタグラムでの発信にも元気をいただき、直接お会いしたいと思い、今回参加しました。

ナカムラリコ(インスタネーム) インスタライブをいつも拝見していて元気をいただいています。実際にお会いして、そのパワーを感じたいと思い参加しました。参加者の方々のお話にも刺激を受け、とても良い時間でした。ありがとうございました。

サヨコ 今回初めての対談形式の講演会で、さまざまな視点から多くのことを学ぶことができました。毎回内容がパワーアップしていて、リピーターが多い理由がよくわかります。今回もとても楽しませていただきました。ありがとうございました。

サヤ インスタのリールで講演会を知り参加しました。遅刻して前半は聞けませんでしたが、後半の質問会で素敵なお話をたくさん聞くことができました。ありがとうございました。

テーブル2

わざと変顔をするのが大好きな篤子さん。止めなはれ!

スミレ 来年南仏に行く予定です。今回で二回目の参加ですが、篤子さんが海外で自分を軸にチャレンジされてきた姿や言葉を聞けることが、いつも勉強になり励みになっています。今回もたくさん素敵な言葉を聞くことができて楽しかったです。ありがとうございました。

モモカ 福岡から来ました。半年前くらいにインスタで拝見して、こんな素敵な女性になりたいと直感で思い、今回初めて参加しました。実際にお会いすると、想像以上にパワフルで魅力的で、とても嬉しかったです。これからも応援しています。ありがとうございました。

ニシオミレ 現在、貿易のビジネスを立ち上げ、日本の食文化やお酒などをヨーロッパに展開したいと考えています。その先駆者である篤子さんの発信を日々インスタで学び、今回直接お会いできて、心に刺さる言葉ばかりでした。これからさらに精進していきたいと思います。よろしくお願いします。

ウメダナミエ(ナミチャン) 友人から篤子さんのノート術を教えてもらったことがきっかけでインスタを拝見しました。いつも軽やかな言葉に元気をいただいています。今日実際にお会いできて本当に嬉しかったです。とても勉強になる時間でした。ありがとうございました。

ミュウミュウ ヨーロッパが大好きで、インスタをいつも見て元気をいただいています。インスタライブも毎回楽しみにしています。いつかドイツやフランスに住みたいと思っているので、とても参考にさせていただいています。ありがとうございます。

イノウエミ 現在香港に在住し、客室乗務員をしています。ノート術を通して自分を振り返る機会が増え、夢を叶えるためにどう使うかを考える中で、篤子さんの考え方に強く惹かれました。実際にお会いしてエネルギーを感じ、さらに頑張りたいという気持ちになりました。とても楽しい一日でした。ありがとうございました。

テーブル3

慌てていたので、カメラ目線の声かけできず。隠しどりのような写真でごめんなさい。

ハラショウ 篤子さんのノート術の一期生として参加していました。もともとインスタで存在を知り、どんな方なんだろうと思ってKindleを読んだのがきっかけです。いろんな経営者や発信者がいる中で、篤子さんの在り方に惹かれて参加しました。同じような思いで集まる方と出会えたり、刺激をもらえる場なので、今回も参加しました。

ショウコ(ショコラ) 9月からフランスに移住する予定で、結婚を機に全く新しい環境に飛び込むことになります。言葉も仕事もゼロからのスタートで不安もある中、篤子さんのインスタに出会い、そのパワーをいただきたいと思い参加しました。皆さんのお話にも刺激を受け、参加して本当に良かったと思っています。ありがとうございました。

ナナ 篤子さん、ドイツで会いましょう。以上です。

クドウショウコ 定年退職後、大好きなヨーロッパ、フランスへの思いから参加しました。佐藤さんのインスタを通じて篤子さんを知り、その愛と金融のパワーをいただきたいと思いました。こんなボスと働いてみたいと感じています。ありがとうございました。

ツカモトテルコ(テルチャン) 篤子さんのインスタを見て、そのハッピーマインドやポジティブさに惹かれ、毎日チェックするようになりました。体調を崩していた時期もありましたが、少しずつ良くなり、今年から何か始めたいと思っていたタイミングで出会えたことにご縁を感じています。今日は楽しい時間をありがとうございました。

イワノチアキ 福岡から参加しました。昨年ヨーロッパを一人で旅した際、その空気感に惹かれて、住めるかもしれないと感じたことがきっかけです。帰国後にインスタで篤子さんを見つけ、エネルギーと前向きな発信に元気をもらっていました。実際にお会いしたいと思い、今回参加しました。ありがとうございました。

タニグチサオリ インスタや著書を通じて篤子さんを知り、感銘を受けました。航空業界で長く働き、昨日退職し、これから客船で新しい仕事を始めます。過去に海外でのトラブルも経験しましたが、篤子さんの言葉に勇気をもらい、もう一度自分の力で挑戦したいと思っています。今回お会いできたことをきっかけに、またどこかでお会いできたら嬉しいです。

アミ インスタで偶然拝見し、パワフルな方だと思ってすぐフォローしました。ノート術にも参加し、今回初めて懇親会に来ました。現在中目黒で美容サロンを経営していますが、今後は北欧でのビジネスにも興味があり、そのヒントを得られたらと思い参加しました。よろしくお願いします。

アヤ 篤子さんと出会って1年半ほどになります。この人を世界に広めたいと思い、インスタを一緒に立ち上げました。今こうして多くの方に届いていることを嬉しく思っています。これからもいろいろな企画を一緒にやっていきたいと思います。よろしくお願いします。

ササザワ 篤子さん、本日はありがとうございました。ご縁をいただいてから5〜6年になりますが、欧州で活動を始めた際には、必要なタイミングで的確なアドバイスをいただいてきました。これからさらにご活躍の幅を広げていかれる中で、その背中を追っていきたいと思っています。今後ともよろしくお願いいたします。

大いに食べて、大いに飲み、おしゃべりに花が咲きました。

お名前はテープ起こしの音声から拾っておりますため、誤りがございましたらご容赦ください。また、あまりに話が盛り上がっていたお二人については、お声を収録できておりません。こちらもあわせてお詫び申し上げます。

帰り道

「みんなの篤子」が自分の元に戻ってくるのを待っているダムさんの話はコチラ

すべてのスケジュールを終えた銀座での帰り道。
ずっと日本語の会話の中にポツンといた篤子さんのご主人・ダムさんが、「ようやく篤子が僕のところに戻ってきた!」とばかりに、大型犬のように寄り添っている姿が微笑ましかったです。

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