『豊劇』×『ふたりのまま』。そして生殖補助医療

2026.5.18

豊岡劇場(通称:豊劇)× ふたりのまま

城崎温泉の近くにある地域密着型のミニシアター「豊岡劇場」で、ふたりのまま。が上映されています。

上映期間|5月15日(金)〜5月27日(水) 

トークイベントに登壇された長村さと子監督 & ひうらさとるさん

豊岡劇場

私が、何とな~く気になっている場所です。

古い映画館を守るだけではなく、「地方に文化の火を残す」という意思がある場所、つまりは、演劇、音楽、対話、地域活動も混ざり合う、「文化の居場所」みたいな存在感が気になっています。 豊岡劇場のHPは、コチラ

ふたりのまま

“見えない存在”にされてきた家族の声に、光をー。 「親である・親になりたい」日本に暮らす4組の女性同士のカップルの日常を編んだドキュメンタリー映画『ふたりのまま』。 2025年9月20日より新宿K’s cinemaほか全国順次公開! (監督・撮影・編集:長村さと子 編集:内田堯) 映画『ふたりのまま』のnoteは、コチラ

生殖補助医療の法案が動いた!?

長村さと子さんと、ひうらさとるさんと私という3人のグループラインがあって、そこに上記の登壇のやりとりが投稿されていた。

登壇日直前、さと子さんはバタバタしていて、「法案が動いたので張り付きになっていた」といった趣旨のことを呟いていた。

「法案」の話を始める前に、さと子さんの立ち位置を明確にしておこう。

<長村さと子監督プロフィール>
一般社団法人こどまっぷ共同代表として、LGBTQ+当事者で子どもを望む、子育て中の家庭を中心に、長年にわたり相談支援を行ってきた。自身も同性のパートナーとともに暮らし、長年の妊活の末に一児の母となり、レズビアンで母親の立場から、すべての女性が生殖補助医療を受けられる社会を目指してロビー活動を続けている。

さと子さんが張り付いていた「法案」というのは、いわゆる“生殖補助医療”をめぐる制度設計の動きだと思う。

今、日本では体外受精や精子提供、卵子提供などの医療は、技術としては進んでいる一方で、「誰が使えるのか」「親子関係をどう扱うのか」「子どもの出自をどう考えるのか」という法律や制度が、実はかなり曖昧なまま進んできた部分がある。

たとえば今でも、日本では法律婚の夫婦を前提に制度が組まれていることが多い。

すると、
・同性カップル
・事実婚
・選択的シングルマザー
などは、医療機関ごとに対応が違ったり、そもそも治療を断られたりすることがあるようだ。

つまり、「子どもを望んでも、入口に立ちづらい人」が存在している。

さと子さんたちの活動は、単に「LGBTQ+支援」という話ではなくて、

「誰が“家族”として扱われるのか」
「親になる資格って誰が決めるのか」
「子どもを持ちたいと思った時、社会はどこまで支えるのか」

といった日本の家族観に関わるテーマなんだと思う。

そしてこの問題って、当事者だけの特殊な話ではない。

世間が一般的だと感じる「ふつう」という前提から少し外れた瞬間、急に不安になる感覚というのは、実は多くの人がどこかで経験している問題だと思う。

さとこさんがやっているロビー活動は、「家族の形が多様になった時代に、制度が追いついていない部分を埋める作業」なんだと私は考えている。

しかもロビー活動って、華やかな登壇より、実際には、

・資料を作る
・当事者の声を集める
・法案の文言を確認する
・突然の修正対応に追われる
みたいな、地味で膨大な実務の積み重ねだ。

「法案が動いたので張り付き」という一言の裏には、そういう緊張感があったのだと思う。

その状態のまま登壇もする。生活者として子育てしながら、制度とも向き合っている人の「現場感のある言葉」を見て、私も一言、ブログに書きたくなった。

制度は、人を守るために作られる。でも時々、「守るための線引き」が、新しい排除を生むことがある。今回の法案に対して、私が感じている違和感は、そこなのだと思う。

そして怖いのは、もし法案が成立してしまった場合、「法案成立以前」に、法律婚という形を取っていない家庭や、そこから生まれた子どもたちまで、“正しくない存在”のように扱われてしまう空気が生まれることだ。私は、その未来を望んでいない。

台湾の生殖補助医療現場で見たこと

茂盛板橋生殖診所の入り口にて。見学をした当日は、雨でした。傘から生活感出ている!

生殖補助医療の現場にて

今年の1月、王先生(伊奈町で地元の信頼を得ていたお医者様)の御縁で、台湾の介護施設を視察する機会を頂いた。

その一環で台湾の「茂盛(モセイ)板橋生殖医療診所」も見学した。ここは、不妊治療や体外受精(IVF)、卵子凍結などを行う生殖医療クリニックだ。台湾はアジアでも生殖医療の技術水準が高いことで知られ、日本から治療目的で渡航する人もいるそう。

茂盛(モセイ)板橋生殖医療診所は、日本語サイトもある。

台湾の生殖医療現場を見学した時、そこにあったのは、シンプルに、「子どもを望む人を支えようとする現場」だった。

子どもが欲しいと思う人がいる。欲しくないと思う人がいる。どちらも尊重される社会であってほしい。

そして、「欲しい」と願った時に、最初から入口に立ちづらい人を増やす社会には、私はなってほしくない。そんなことを考えながら、台湾で見た風景を、ここに記録しておこうと思う。

追記(5月20日)

台湾の話について、後日、長村さと子さんに少し補足を伺いました。

台湾では2019年に同性婚が法制化され、「アジアで初めて同性婚を認めた国」として知られています。

ただし、生殖補助医療については、また別の制度の壁があるそうです。現状では、同性カップルが第三者からの精子提供などを利用して医療機関で生殖補助医療を受けることは法律で禁止されいるそうです。

同性婚が認められている台湾ですら、子どもを持つことには、越えなければいけない壁があるのだと、衝撃を受けました。

衝撃を受けた。。とか呑気なことを言っている場合ではないですね。

家族の多様性をめぐるテーマは、結婚制度だけで完結するものではないのだと感じます。ぐるっと一周回って、やはり冒頭の映画を多くの方に見て欲しいと願いします!

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