2023.9.6
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「母親に着地」するのは、意外と難しかった。二十代の後半になって仕事の面白さに目覚めた私は、三十歳の時に第一子を出産するも、子育てよりも、仕事に気持ちが向いてしまっていた。いわゆる「母親ワールド」にも、馴染めなかった。
子どもを保育園に預け、東京でマネーライター業に夢中になっていた矢先、夫に札幌転勤の辞令が出る。迷った末に仕事を手放して、家族で札幌に転居することにした。
やがて双子を授かり、出産。
その妊娠・出産を通じて、「今度こそ、ちゃんと母親になりたい」と思うようになった。そんな気分になった時に、K保育園(以下、K園)と出会う。ここでなら「母親をちゃんとやりたい」というエネルギーの活路を見つけられるかもしれないと思う。
K園での子育ての第一歩は、「子どもは大人とは全く違う生き物である」と頭を切り替えることだった。子どもとは、どんな生き物なのだろうか?
「発達は、道筋」という言葉を、K園ではよく使う。個人差はあれど、人間の成長には一定の道筋があるという考え方である。
「ヒト」が「人間」になる過程、つまり0歳児から5歳児までの各年齢の子どもの「こころ」「からだ」「ことば」「あそび」「せいかつ」の発達について、K園の園長である富岡美織さんに話を伺った。
K園の保育に共鳴し子育てに生かしたいと思う私だったが、現実はなかなか思い通りにならない。
子ども相手にキレて、叩いてしまうこともある。
いくら素晴らしい保育理論を掲げたところで、子どもにイライラする気持ちは止められなかった。
K園での日々から学んだことは「今、目の前にいる我が子と、どう生きるか?」ということだ。それはそのまま、今、ここにいる自分と向き合うメソッドになることに気がついた。だから、これは自分と向き合って生きていこうと思い始めた私についての物語である。
どこかの誰かが見つけた素敵な人生を、うっかり目指していないだろうか? 私の人生を歩んでいるだろうか? 時には自分に問うてみよう。
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