麗しき主婦道

主婦er 〜麗しき主婦道〜

母親になるって、どういうこと? ~母親に着地する方法1~

2023.9.13

やっぱり仕事の方が魅力的

長男は、結婚して丸二年が経ち、「そろそろ赤ちゃんが欲しいね」と夫と話し合っていた頃に授かった、待望の妊娠である。でも「おめでたですよ」と医師から伝えられた瞬間、最初に頭によぎったことは「来週の取材のロケ先、遠かったよな。つわりが強かったらどうしよう?」ということだった。

長男の妊娠中は、「出産しても、今のままの仕事ペースを落とさないためにはどうしたいいか?」が、最大の関心事だった。だから母親になるという自覚も覚悟もないままに、出産の日を迎えた。

それでも想像していた以上、いや想像していた数十倍、子どもはかわいかった。息子と接する一瞬一瞬が喜びだったのも、本当である。

ただ、正直に言えば、子育てより仕事の方がやっぱり魅力的だった。そもそも母親になる、とは、どういうことなのだろう? 子育てとは、何をすることを言うのだろう? 

母親である自分がイメージできない

出産当時の私は、仕事が生活の中心だった。専業主婦として子育てしている友達とは、自然と疎遠になっていた。核家族で育ち、赤ん坊と身近に接した経験もない。だから「子どもを育てていく自分」や「母親として、どう子どもに接したいか」という具体的なイメージが、全く持てなかった。

子どもを産めば、母性が芽生える。母性が芽生えれば、子育てをどうすればいいのか自然にわかるものだ。世の中にはそんな神話がまかりとおっているけれど、本当にそうなのだろうか? 

少なくとも私には、自然にはわからなかった。母乳、布オムツ、離乳食の手作り、絵本の読み聞かせ・・。目についた「良い子育てとされること」は、たいていやってみた。

でも「カタチばかりな感じ」が拭えない。私が求めていたのは、母乳や、布オムツといった育児の根底に一貫して流れていること、「なぜ、それをするのか?」という問いの答えだった。

私がしたい子育ては、今、やっていることなの?

ふとした生活の合間、たとえば保育園送迎時の信号待ちの時に、「私がしたい子育ては、今やっていることなのだろうか?」という気持ちが何度もよぎった。求めているニオイのする本を読んだり、自然育児を実践している保育園の記録映画を見に行ったこともある。

それでもコレ! というものには出会えず、仕事の忙しさとあいまって、日々はただ過ぎて行った。

呼応したくなったK保育園の空気感

「プロローグ 夫の転勤辞令」には、結論を書かなかったが、すったもんだの末、私は全ての仕事を手放して、夫の転勤先の札幌に引越すことにした。

神様に、「あなたにとって、今、最も大切なのは、仕事なの? 家庭なの?」と、問われたような気がしたからだ。

私にとって最も大切なのは、息子。彼のためには、どの選択肢がベストなのか? 

そう考えた時、ケジメとして、一度、仕事を手放してみようと思った。(この話は長くなるので、機会があれば、回を改めて書くかもしれない。)

2月2日に札幌行きの話が転がり込んできて、3月26日に、札幌に上陸。第一日目は、息子がこれから通うK保育園(以下、K園)の入園説明会の日でもあった。

K園に一歩足を踏み入れた時の光景は、今でも忘れられない。檜の床の広いホール、ホールの中心にある天窓から燦々と降り注ぐ自然光・・。呼応したくなる空気感が、K園には漂っていた。

「今すぐ妊娠しなくちゃ。そして三人目は年子で産もう」と、とても焦ったのを覚えている。子どもは、三人欲しいと思っていた。転勤族だから、いずれは札幌を去る。だからこそ、できるだけ長くこの園で子育てをしたいと思ったからだ。

その想いがあまりに強すぎたのが、双子を授かった理由なのかもしれない。翌年の4月1日、我が家の双子は、K園の0歳児クラスの一員となった。

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前回 プロローグ 夫の転勤辞令

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【あらすじ】【目次】

母親に着地する方法 あらすじ