2023.9.8
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「北海道に転勤になった。三月一日に札幌に赴任する」と、深夜に帰宅した夫から告げられた。二月二日のことである。
「ええーっ、ありえない。私、一緒に行かないから」と、即答した。考えるよりも先に、言葉が口から出てしまったのだ。「何だよ、それ。もっと別の言い方はできないのかよっ!」と、夫が怒鳴る。
当時、私は東京でマネーライターをしており仕事が面白くて仕方がなかった。家族は二歳年下のサラリーマンの夫と三歳の男の子がひとり。「好きな仕事があって、家族もいる。何と幸せなのだろう」と思っていた。
ただ、その幸せを守るためには、毎日を走り続けなければならなかった。「どこに行きたくて、走っているのだろう?」「今の一生懸命の先にあるのは、何?」という気持ちが、時おり頭をもたげた。
けれど、深くは考えられない。「今日の保育園のお迎えの時間に間に合う?」「明日の取材の下調べをしなきゃ」といった日常に追われて、そんなことを悠長に考えている余裕などなかったのだ。
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